「衣服内の気候」というと一般には耳慣れない言葉ですが、衣服を着ていて、「あたたかい」、「涼しい」、「むれない」と感じるとき、衣服と皮膚の間の微小な空間に生じる温度・湿度・気流の状態のことを言います。
衣服内の気候の快適な範囲は、一般的には、温度が32℃のプラスマイナス1℃、相対湿度が50%のプラスマイナス10%といわれ、大変狭いものです。人の皮膚温度は33〜34℃ですので、衣服内気候における快適な状態は、衣服内の温度がそれよりやや低め目で、空気が乾いている状態のことをいいます。寒さを防ぐには、低い衣服内温度を上げ、蒸し暑さをしのぐには、高い衣服内湿度を下げればいいわけです。
たとえば、寒さから身を守り、冬を快適にすごすには、次の四点に気をつけます。
1) 頭部や躯体部(内臓のある体の中心部)を保温します。
2) 衣服の中に空気を多く抱き込むように、厚手の服あるいは重ね着をします。
3) 外界からの風と水(雨、雪)を遮断します。
4) 汗をかいたときには、汗を肌から遠ざけ、外にはき出すようにします。
この4点のなかでも、2)にあるように、たくさんの空気の層をカラダにまとうことは、つまり重ね着をすることは、寒さをしのぐ上で、たいへん有効です。
例えば、ジャケットの下にベスト、ブラウス、インナーだけの服装では、外気温度0・9℃のとき、衣服内の温度は27.9℃にしかならず、寒くてたまりませんが、コートを着ると28.3℃になり、なんとか寒さが我慢できます。さらにセーターを着込むと 30.1℃となり、やや寒い程度となります。
冬の下着は、「より暖かく、より軽く」がキーポイントで、軽いウエアの重ね着を工夫したり、空気の層をたくさん身にまとうことに気をつけて、寒さをしのぐようにしましょう。
一方、暑い夏を快適にすごすための衣服内の気候を考えてみましょう。高温多湿な日本の夏をしのぎやすくするには、次のような方法が有効です。
1)空気が身体全体を循環するような、ゆったりとしたデザインに。
2) かいた汗を素早く吸い取り、外へ発散させる素材を使います。
3) 太陽が照りつけるときには、太陽光の放射エネルギーを遮断します。
4) 外気温が非常に高いときには、熱エネルギーを遮断します。
この4点のなかでも、とくに大事なのは2)にある、汗を素早く吸い取って発散させること、つまり吸湿性と、吸水性に優れた下着が求められるわけです。
夏に下着を着ると暑そうにみえますが、実際は下着が汗を吸って衣服内湿度の上昇を抑制してくれるので、さらさら感が維持されます。昔から紳士は夏こそズボン下(すててこ)を履くというのは、まさにこの原理のこと。やはり夏でも、なるべく下着を着用する方が快適にすごせるのはそういった理由からです。
みなさんが、実感的に、「より暖かく」とか「より涼しく」なるように、衣服の選択に気をつかったり、工夫をしたりしていますが、それらは、衣服内の気候という形で、科学的に裏付けられているのです。
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